【専門医解説】鼻の手術後の喫煙と副流煙について

銀座すみれの花クリニックの院長横山才也です。

鼻の手術後の喫煙と副流煙は、手術結果に悪影響を及ぼす可能性があります。以下にその理由と、手術後の注意点についてご説明いたします。

臨床的に喫煙者と副流煙の影響を受ける方は、皮膚移植の生着率が低く、皮弁形成においては末梢の壊死の可能性が高くなり、また、指の切断の血管吻合手術においては指の生存率が低い、以上はすでにわかっていることです。従って、これらの臨床経験から以下のことが考えられます。但し、論文などで報告されているわけではないので、これらについては鼻の手術をこれまで多くやってきた臨床経験による推察です。

またタバコが、末梢の細動脈の血管を収縮し、血流が低下することは、広島大学病院国際リンパ浮腫治療センターの光嶋勲教授がすでに学会で ニコチンを含む タバコによってラットの細動脈が収縮する 動画で報告しています。

喫煙が手術に与える影響

  • 血流の低下: タバコに含まれるニコチンは真皮内の細動脈を収縮させ、血流を低下させます。これは、手術部位への血液供給を妨げ、組織の回復を遅らせる原因となります。
  • 移植組織への影響: 特に、真皮脂肪移植や細片耳軟骨移植を行った場合、血流の低下は移植組織の生着を妨げ、萎縮を引き起こす可能性があります。
    • 真皮脂肪移植片: 移植後約1週間で血管が新生し血流が供給されますが、喫煙により移植を受ける側の真皮内細動脈の血流が低下すると、移植組織への栄養供給が不足し、生着しにくくなります。
    • 軟骨移植片: 移植軟骨には顕微鏡的に周囲組織からの血管侵入(新生血管)は早期には認められないので、血漿によって術後しばらくは生存している可能性があります。したがって喫煙や副流煙によって移植片周囲の血流が低下し、軟骨組織への栄養供給を妨げ、生着を困難にし、萎縮を引き起こす可能性があります。

副流煙の影響

タバコのフィルターがない副流煙には、直接喫煙するよりも3.7〜3.8倍多くのニコチンが含まれています。そのため、手術後の患者様が副流煙にさらされることも、喫煙者以上に手術結果に悪影響を及ぼす可能性があります。

注意点

  • 手術前: 手術を受ける3〜4ヶ月前から禁煙期間を設けることが望ましいと思います。しかし、現実的に難しいという声も多く、当院では少なくとも8週間(2ヶ月)の禁煙を指導しています。担当医の指示に従ってください。
  • 手術後:
    • 術後4ヶ月間: 喫煙は絶対に避け、副流煙にもさらされないようにしてください。真皮脂肪移植の場合、浮腫が軽減し、血流が安定するまでに3〜4ヶ月かかると考えられます。
    • 術後4ヶ月以降: 可能であれば、真皮脂肪移植や細片耳軟骨移植を受けた方は、喫煙と副流煙を避けることをお勧めします。いつまで、という期限はありません。
  • その他: 喫煙歴が長い方や、手術直前まで喫煙していた方は、手術侵襲で真皮内の細動脈が攣縮しやすい傾向にあります。手術前に医師に必ず喫煙状況をお伝えください。

まとめ

手術後の良好な経過のためには、喫煙と副流煙を避けることが非常に重要です。

以上は、私が大学院外科系形成外科学講座に在籍していた頃のラット実験結果に基づくところも含まれています。移植片への新生血管は、移植手術を行ってから平均144時間と確認されました。その実験に基づいて移植を考えると健康体であれば移植片に血流が灌流するのは約6日です。極めて細い血管であり、脆弱なため外力によって新生血管が破綻することもあります。また新生血管を認める移植6日目は安定した血液供給状態とは言えません。新生血管が完成され、組織片の灌流が安定化するのは少なくとも2週間はかかります。
ただし移植片を受ける側の皮膚が薄い、瘢痕が著しい場合などは術後6〜7日目に新生血管が出現するかは未知です。移植片への新生血管が術後10日目以降に出現するようなら、移植片は阻血によって生着は困難です。
特に真皮脂肪組織片は、血流の良い部位に移植する必要があります。シンプルに移植を行うのでなく(単純に移植片をのせるといった考え方は間違っています)、執刀医が術前・術後の指導を行い、移植を受ける側の血流を考えて手術を行うことが大切です。

私が患者さんに日頃お話する内容は私が関わった実験に基づいています。ネットで「私は吸っても大丈夫だった」という方がいるかもしれません。それは個人差があることですし本当かどうかもわかりません。医師の指導に従ってください。

2025年3月12日

医療法人社団S&T医会

銀座すみれの花クリニック

院長 横山才也

形成外科学会認定専門医/JSAPS日本美容外科学会専門医