*ケガの画像があります。苦手な方はお気を付け下さい。
拙著『形成外科は感動外科』に掲載させていただいた患者様(P233~)の続編です。患者様から許可をいただいております。
1980年代に海外で鼻を高くするために入れたインプラント。それから16年後、交通事故で眉間にケガをされ、それがなかなか治らないということで来院されました。インプラントが原因で異物反応による炎症を起こし、皮膚が腐ったために開いた穴だと思われました。
下の写真は初診時のものです。

ケガのところを診たら、素材のわからない長さ3センチほどの固い組織が出てきました。それらを取り出すと、眉間の皮膚がかけている状態になりましたので、その部分に、おでこから皮膚をとり移植を行うことにしました(皮弁形成術といいます)。
上の写真の黒矢印は移植する皮膚(皮弁といいます)で、赤い矢印は、その皮膚に流れる血管の走行です。この手術では、この血管を付けた皮膚を欠損部に移植しました。皮膚をとった部分は1本線に縫いました。
この男性は、ご自分が16年前に鼻の手術をしていることを今更奥様に打ち明けられないということで悩んでいました。手術に関しても、自分からは奥様にどうしても正直に伝えることができないということで、奥様には大変申し訳なかったのですが、私から「鼻にばい菌が入って組織がダメになった」と説明し、手術を行いました。
↓術後一年
手術したキズも落ち着き、患者様は満足されてました。鼻の縦のキズは残っています。
この手術から15年近く経った春、私はある銀座の飲食店でこの患者様とバッタリ再会しました。
私は自分のテーブルから向かいのテーブルの男性を見るともなく眺めていました。どこかで会ったことがあるような気がしていたのですが、確信を持てません。
しばらく見ていて、男性が顔の角度をほんの少し変えた時に、私は、その男性の眉間にうっすらとした傷あとを見つけました。その傷を見た途端、私は男性のことを一気に思い出しました。
すると、男性もハッと私に気が付き、私と男性は人目も憚らず抱き合って再会を喜びました。
「僕のこと覚えていますか?」というと、
「手術してくれた先生のこと、忘れるわけないじゃない!」といって、肩を何度も叩いてくれました。
私が近くでクリニックをやっていることを告げると、すぐに遊びに来てくれました。
こちらは手術から15年後の画像です。


一部にキズが残っていますが、おでこや鼻の縦の縫合線はほぼ消失していました。
「奥様にまだ鼻のことは内緒にされているのですか?」と尋ねると、
「もう随分前に打ち明けました。妻は全然気にしていないようです」
とのことで、私も安堵しました。
ポケットからお孫さんの写真を取り出し、嬉しそうに見せてくれました。
鼻を高くするには、インプラントや注入物がありますが、
感染した場合や露出した場合はすぐに取り除く必要があります。
放っておいて感染が悪化すると皮膚壊死が進み、
この患者様のように皮弁形成などの再建手術が必要になります。
鼻のトラブルは悪くならないうちにお早めにご相談ください。
余談になりますが、これまで患者様をみていますと、
「結婚前にした整形のことを配偶者に言うべきかどうか」
というのが整形を経験した方の悩みになっていくようですが、
結婚生活が長くなり夫婦仲が成熟していれば
告白してもほとんどの方が心配するほどの困難もなく乗り越えていかれるようです。
鼻のインプラントを抜いて鼻が低くなった患者様に
「たいしてわからないよ」「変わらないよ」
と声をかけられたパートナーの方もいました。
夫婦も長い付き合いになると、そういうことが関係を壊す要因になることはあまり無いのでしょう。
一緒に修正のご相談に来られるパートナーの方もいますし、
術後お迎えに来られる方もいらっしゃいます。
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銀座すみれの花形成クリニック
院長 横山才也
銀座すみれの花形成クリニック
ホームページ
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