【専門医監修】他院鼻中隔延長術後の全摘手術について

鼻中隔延長術(びちゅうかくえんちょうじゅつ)は、主に鼻先の形状や鼻全体のバランスを整えるために行われる美容外科手術であり、軟骨(例:耳介軟骨、肋軟骨、鼻中隔軟骨など)や異物(メディポワ、PCLシート、他人の肋軟骨)を使用して鼻先を高くする手術です。*移植片や留置する異物はクリニックによって異なります。

移植片や留置した異物を全摘出のみをする場合、以下のような結果が予想されます。


美容的な影響

  1. 鼻の形状の変化・崩れ
    • 延長によって支えられていた鼻先が、短くなったり、下がったり、曲がったりする可能性があります。
    • 鼻尖・鼻柱が不安定になり、鼻先が丸くなる鼻が潰れて見えるといった見た目の変化があります。
    • 鼻がアップノーズになり鼻の穴がより見えるようになることもあります。
  2. 顔全体のバランスへの影響
    • 手術によって改善されていた点が元に戻ったり、アンバランスになる可能性があります。
    • 単純に元の鼻に戻る方は少なく、元の鼻に近いか、元の鼻より低い鼻になることがあります。

機能的な改善

  • 鼻呼吸が楽になる
  • 表情の作りにくさが解消される
  • 鼻先の固さが解消される

⚠️ 「全摘のみ」のリスクと注意点

  • 変形:完全に元の状態に戻るわけではなく、前の手術の影響を受けた結果となります。過激な手術を受けている鼻ほど元の状態には戻りません。
  • 適応:鼻中隔軟骨が採取された鼻中隔延長術を受けている方とEnd to End鼻中隔延長術を受けている方は「全摘のみ」の適応がありません。
  • デザイン:猫手術、貴族手術などフルセットで手術を受けている場合、どこまでリセットすべきか助言を行ったうえ、最終的にはご自身で判断していただきます。
  • 全摘後の結果について:全摘後、ある程度整えて手術を終えますが、手術後の鼻の形の結果について当院は責任を負うことができません。患者様が結果を受け入れる努力が必要となります。ご希望があれば後日再建もできます。

対策や代替案

  • 再建手術を同時に行う:除去と同時に他の軟骨を用いて再建することで、美容的・機能的な、極端な悪化を防ぐことが可能です。鼻翼軟骨形成術+軟骨移植術、ストラット再建術、再延長術などで解決します。
  • 一旦全摘して様子を見て再建手術を行う:全摘後受け入れられるかどうか様子を見て、どうしても受け入れられない場合は再建手術を実施することが可能です。

一度鼻中隔延長を受けていて内部の状態が健康な人とは異なります。一度目の手術よりも結果に限界があることは肝に銘じてください。再度再建する際、瘢痕や組織欠損により、手術の難易度が上がります。


「全摘のみ」の条件

以下の条件に合う方については全摘をお受け入れしています。

✅過度な鼻中隔延長を行うクリニックの手術を受けていない

✅術後2週間以内(まともな手術を受けていれば戻せる可能性が極めて高い)

✅術後のリスクを受け入れる覚悟をしている

✅メンタルのコンディションが悪化していない

✅違和感(突っ張る、固い、笑いにくいなど)をなくして自然に戻りたいと強く希望している

✅健康を優先したい。


修正の選択と費用

以下からご選択いただきます。料金は2026年3月時点のものです。

1、全摘のみ  手術費用:税込1,028,500万円 *モニター割引要相談

移植したものを全て抜き、広がった鼻翼軟骨を整え術後に鼻尖に凹みができたりすることを防ぐ処置をして手術は終わります。「もともとのお鼻に鼻中隔延長によるダメージが残る状態」になります。全摘のみですので、もともと左右差があったり、治せない左右差ができている場合は、左右差はそのままです。*他に何らトラブルのない状態の方の料金です。

2、全摘+再建 修正手術費用:税込150〜300万円程度 *モニター割引あり

鼻翼軟骨修正、自家組織の移植、ストラット法、再鼻中隔延長、などを用いて、高さや尖りをマイルドに変えたり、アップノーズになる鼻孔縁を可能なところまで引き下げ、左右差をできる限り解消し、可能な範囲で美容的な要素を含めたデザインに修正します。手術内容によって料金が変わります。


全摘の症例

全摘と一言でいっても、前医で受けた手術が大きく影響します。お一人お一人状況が全く異なりますので、診察でご説明いたします。わざわざ前医からカルテを取り寄せていただかなくても当院では、患者様からの情報と診察で、受けられた手術の内容をある程度把握できます。

全摘のみのケース

こちらの患者様は、医師が「保存軟骨を入れただけ」でしたので元に戻りました。皮肉なことに「鼻中隔延長と言いながら技術がないから余計なことをしていない」という、詐欺的とも思える行為が不幸中の幸いとなったケースです。

全摘をして1年7ヶ月様子を見たケース

左は全摘前、右は全摘後1年7ヶ月の画像です。鼻先が平坦になりました。患者様は鼻先のボリュームを整えるために再建手術を後日受けられました。

鼻中隔延長手術の術前と術後の比較写真。左側は術前、右側は術後のプロファイル。

全摘の適用がなく再建したケース

過度な手術や乱暴な手術を受けた方で全摘のみを選択した場合は、「全摘後」(画像中央)で手術は終了します。患者様の「全摘後」の画像のお鼻は、元々のお鼻とは異なり、ほとんどの場合術後受け入れが困難になるため全摘をお勧めしていません。*全摘後と再建後の画像はドレナージチューブにぼかしを入れているため鼻孔縁が不自然になっていますが実際は自然な仕上がりです。

当院の診察で「全摘後に受け入れられない程度のアップノーズになる」と言われた患者様です。全摘のみであれば、画像中央の状態で手術が終わります。患者様は再建も選択されました。

全摘の適応がなくアップノーズの可能性が非常に高い方が全摘を希望される場合は、この中央の画像で手術を止めることになります。受け入れる強い決心が必要です。

最も覚悟が必要なのは、技術の低い医師がかなり侵襲を加えた鼻中隔延長術の修正です。確実に全摘は適応外ですし、再建も難易度が上がります。鼻中隔延長術の技術は医師によってプロのデザイナーと子どものお絵描きくらいの差があります。

終わりに

銀座すみれの花クリニックでは、これまでの経験から、患者様のキャラクターやメンタルの状態を見て、全摘後のお鼻が受け入れられない可能性が高い患者様には全摘+再建をお勧めしています。前医の手術でショックを受けたところに全摘後のお鼻の状態が悪いと、メンタルが一層悪化します。再建手術も受けて劇的にメンタルや生活が改善する方もいます。専門医の助言をしっかりと受け止めてご選択ください。


【監修】

日本形成外科学会認定専門医/美容外科専門医(JSAPS)

銀座すみれの花クリニック

医学博士 院長 横山才也

【専門医解説】鼻の手術後の喫煙と副流煙について

銀座すみれの花クリニックの院長横山才也です。

鼻の手術後の喫煙と副流煙は、手術結果に悪影響を及ぼす可能性があります。以下にその理由と、手術後の注意点についてご説明いたします。

臨床的に喫煙者と副流煙の影響を受ける方は、皮膚移植の生着率が低く、皮弁形成においては末梢の壊死の可能性が高くなり、また、指の切断の血管吻合手術においては指の生存率が低い、以上はすでにわかっていることです。従って、これらの臨床経験から以下のことが考えられます。但し、論文などで報告されているわけではないので、これらについては鼻の手術をこれまで多くやってきた臨床経験による推察です。

またタバコが、末梢の細動脈の血管を収縮し、血流が低下することは、広島大学病院国際リンパ浮腫治療センターの光嶋勲教授がすでに学会で ニコチンを含む タバコによってラットの細動脈が収縮する 動画で報告しています。

喫煙が手術に与える影響

  • 血流の低下: タバコに含まれるニコチンは真皮内の細動脈を収縮させ、血流を低下させます。これは、手術部位への血液供給を妨げ、組織の回復を遅らせる原因となります。
  • 移植組織への影響: 特に、真皮脂肪移植や細片耳軟骨移植を行った場合、血流の低下は移植組織の生着を妨げ、萎縮を引き起こす可能性があります。
    • 真皮脂肪移植片: 移植後約1週間で血管が新生し血流が供給されますが、喫煙により移植を受ける側の真皮内細動脈の血流が低下すると、移植組織への栄養供給が不足し、生着しにくくなります。
    • 軟骨移植片: 移植軟骨には顕微鏡的に周囲組織からの血管侵入(新生血管)は早期には認められないので、血漿によって術後しばらくは生存している可能性があります。したがって喫煙や副流煙によって移植片周囲の血流が低下し、軟骨組織への栄養供給を妨げ、生着を困難にし、萎縮を引き起こす可能性があります。

副流煙の影響

タバコのフィルターがない副流煙には、直接喫煙するよりも3.7〜3.8倍多くのニコチンが含まれています。そのため、手術後の患者様が副流煙にさらされることも、喫煙者以上に手術結果に悪影響を及ぼす可能性があります。

注意点

  • 手術前: 手術を受ける3〜4ヶ月前から禁煙期間を設けることが望ましいと思います。しかし、現実的に難しいという声も多く、当院では少なくとも8週間(2ヶ月)の禁煙を指導しています。担当医の指示に従ってください。
  • 手術後:
    • 術後4ヶ月間: 喫煙は絶対に避け、副流煙にもさらされないようにしてください。真皮脂肪移植の場合、浮腫が軽減し、血流が安定するまでに3〜4ヶ月かかると考えられます。
    • 術後4ヶ月以降: 可能であれば、真皮脂肪移植や細片耳軟骨移植を受けた方は、喫煙と副流煙を避けることをお勧めします。いつまで、という期限はありません。
  • その他: 喫煙歴が長い方や、手術直前まで喫煙していた方は、手術侵襲で真皮内の細動脈が攣縮しやすい傾向にあります。手術前に医師に必ず喫煙状況をお伝えください。

まとめ

手術後の良好な経過のためには、喫煙と副流煙を避けることが非常に重要です。

以上は、私が大学院外科系形成外科学講座に在籍していた頃のラット実験結果に基づくところも含まれています。移植片への新生血管は、移植手術を行ってから平均144時間と確認されました。その実験に基づいて移植を考えると健康体であれば移植片に血流が灌流するのは約6日です。極めて細い血管であり、脆弱なため外力によって新生血管が破綻することもあります。また新生血管を認める移植6日目は安定した血液供給状態とは言えません。新生血管が完成され、組織片の灌流が安定化するのは少なくとも2週間はかかります。
ただし移植片を受ける側の皮膚が薄い、瘢痕が著しい場合などは術後6〜7日目に新生血管が出現するかは未知です。移植片への新生血管が術後10日目以降に出現するようなら、移植片は阻血によって生着は困難です。
特に真皮脂肪組織片は、血流の良い部位に移植する必要があります。シンプルに移植を行うのでなく(単純に移植片をのせるといった考え方は間違っています)、執刀医が術前・術後の指導を行い、移植を受ける側の血流を考えて手術を行うことが大切です。

私が患者さんに日頃お話する内容は私が関わった実験に基づいています。ネットで「私は吸っても大丈夫だった」という方がいるかもしれません。それは個人差があることですし本当かどうかもわかりません。医師の指導に従ってください。

2025年3月12日

医療法人社団S&T医会

銀座すみれの花クリニック

院長 横山才也

形成外科学会認定専門医/JSAPS日本美容外科学会専門医

94歳の老衰死を考える:医者の視点

院長横山の話を文字起こししたものです


Xの発信(94歳の患者さんの死を家族に「老衰です」と伝えたところ家族が納得しない)を見かけたんだけど、

高齢者 94歳の人が亡くなった時に医者が 家族に「老衰です」 っていうの?

それはあんまり良くない。人生の最後の 家族への説明だからね、その言葉ではやっぱり家族は傷つくと思います。Xでは”イイね”が沢山ついていて「医者は悪くない、患者の家族がおかしい」に賛同するコメントが溢れていたけど、私が国家試験の出題者だったら、(「老衰です」と伝えるのは)よくない回答とするね。

死は人生の一大イベント

人が 亡くなる時っていうのは その人にとって人生の中で大イベントなんだよね。人生の大イベントは二つ、まず出産でしょ、生まれてきてくれて本当にありがとう、狭いトンネルを 頭を潰されながらやっと潜り抜けてこの世に出てきた大事件、 そして次は自分を生かす全ての機能が静かに止まって亡くなる時。 人生で生まれてくる時と亡くなる時が、2大イベントなんですよ。 2回目の最後のイベントをちゃんと締めくくってあげないと、家族はやっぱり 納得しないよね。 きちんと状態や経過を説明した上で、「(亡くなった方もご家族も)最後まで一生懸命頑張りましたね」「楽しい人生を送ってきたと思いますよ」「この方も頑張って生きてこられたと思います」って温かい言葉で包んであげることが一番良いのだろうと思います。

「老衰です」っていうのはもう 論外。 

家族が大切な親が亡くなった時、それはもう平常心ではないのは当たり前。取り乱す人もいるし、蘇生してと無茶を言う人も当然いる。医者としては最善を尽くしますよ。高齢者は心臓マッサージすると肋骨がボキボキ折れるからあんまりできないんだけど、それでも最後までやれるところまでやって生き返らないことを納得させてあげる。「ご家族が来てくれてこの方も喜んでいると思います」「この方も最後まで頑張りましたね」「お疲れ様って言葉をかけてあげてください」と言ってあげる方が家族が救われると思います 。これを言って家族が収まらなかったら、まだ自分の言葉には力がないんだと自覚した方がいい。バイトでご臨終に立ち会っただけだと説得力0かもしれないけど。

生まれる時ってめっちゃくちゃ大変なんだなっていうのは自分は2年間NICUにいたのでわかる。世の中、健康に生まれてくる子ばかりではないんですよ。本当にみんな頑張ってお母さんのお腹から出てきて、大きな病気を抱えながら何も疑わずに生きている。それを見てから、次は形成外科の仕事で 終末医療も見てきましたから。人生においてすごく一大事、大きなイベントって生まれた時と死ぬ時なんだなって思います。就職したとか結婚したとか、自分の力で動かせるものは大したことじゃないんです。

喜んであげるって事はとっても大事です。「 生まれてきてよかったね」って子供を喜んであげる。 事故とか早逝とは違い大往生で死んでいく時、それは 人生がやっと終わった人たちだから、「平均寿命よりもこんなに時間を与えられて幸せな人生でしたね、良かったですね 」とお祝いしてあげる。

それを「老衰 です」って言い放つのは、もう大きな間違い。なんだか適当な言葉で突き放された感じを受ける家族の気持ちを想像した方が良い。もうちょっと医師として経験を積んだら理解してもらえると思う。このXを読んで「94なら老衰だろう、老衰で何が悪いんだ、騒ぐ家族が悪い、蘇生を要求するなんて論外」と思った先生がいたらもっと勉強した方がいいし、もう少し日頃の業務の中で自分の医療を問い直す癖をつけた方がいい。

患者さんやその家族に慕われる先生の良いところをどんどん盗むといいよね。良い先生が身近にいるって医師人生を左右するほどのことだったりする。私が終末医療を学んだのはある病院で三浦先生って内科の先生の診療を近くで見ていたから。首都圏から北海道に移住した先生。素晴らしい先生だった。老衰による死に対しては、家族も納得させて全員幸せな気持ちで幕を引けるのが名医なんだなととても勉強になった。

「老衰」って医師にとってはコスパもタイパもいい言葉。老衰は事実だし、これさえあれば家族を簡単に納得させられると思っている先生も多いと思う。

でも医療ってそうじゃないと思うんだ。