【専門医解説】鼻の手術のあと、瘢痕の増殖と改善について

微笑む女性が頬に手を添えているポートレート

最近はAIで得た回答をそのまま「正しい」と信じて気軽に投稿された情報が散見されますが、臨床経験がほとんどないか経験の浅い投稿者の投稿内容が検証されることなく正当性を纏って広がっているのは日常の光景となりました。それらの投稿が一般的に形成外科で共有されている知識や現場の肌感覚と乖離していることは珍しいことではありません。

こちらの記事は、30年以上にわたる臨床経験に基づいていますが、当院の特殊性「鼻の修正手術が8割、私の執刀、当院のアフターケアを受けられた患者様のデータ」という点をふまえてお読みください。

鼻の美容手術後の瘢痕増殖期について

一般的な創傷治癒学では、線維芽細胞の増殖やコラーゲン産生は術後数日から始まり、増殖期はおおよそ術後1~8週間と説明されます。

しかし、鼻形成術、特に鼻中隔延長術や修正手術では、患者様が実際に経験する「瘢痕の増殖」はこれより長期間に及びます。

8割が鼻の修正手術である私の臨床経験では、術後経過は次のように推移することが多いです。

鼻手術後の痩改善の経過を示した図。術後5日から1年までの段階的な変化を説明している。各段階での症状やポイントが図解されている。

術後5日~3週間:浮腫期

この時期は、瘢痕そのものよりも術後の浮腫の影響が主体です。

鼻全体が腫れ、硬さもありますが、その多くは浮腫によるものであり、本格的な瘢痕増殖とは区別して考えます。


術後3週間~4か月:臨床的な瘢痕増殖期

術後3週間頃から、浮腫が徐々に軽減する一方で、瘢痕組織の増殖が目立つようになります。

この時期には

  • 鼻尖が硬くなる
  • 可動性が低下する
  • つっぱり感が増す
  • 鼻先が厚ぼったく見える

といった症状が現れやすくなります。

瘢痕は術後3~4か月頃に最も多くなることが多く、これが臨床的なピークであると感じています。


術後4か月以降:増殖停止期

術後4か月頃になると、新たな瘢痕の増殖はほぼ落ち着きます。

ただし、この時点で瘢痕が消失するわけではなく、ここからは増殖ではなく成熟・再構築の段階へ移行します。


術後5か月以降:瘢痕軟化期

術後5か月頃から、瘢痕は徐々に柔らかくなり始めます。

一方で、この時期には個人差が大きく、

  • 5か月頃から改善する方
  • 6か月頃から改善が始まる方

など様々です。


術後1~1年半:瘢痕成熟期

瘢痕は少しずつ吸収・再構築され、

最終的に最も落ち着くのは術後1~1年半頃であることが多いと考えています。


最も重要なのは「4か月時点の瘢痕量」

臨床上、最も重要なのは術後4か月頃の瘢痕量です。

瘢痕は4か月頃をピークとして、その後徐々に減少していきますが、

ピーク時の瘢痕が多ければ、その後1年、あるいは1年半経過しても瘢痕が残存する可能性が高くなります。

逆に、ピーク時の瘢痕形成を少なく抑えられれば、その後の軟化や成熟も順調に進み、より自然な状態に近づきやすくなります。

そのため私は、術後4か月時点での瘢痕量を可能な限り少なくすることが、長期成績を左右する重要なポイントだと考えています。

これは修正手術だけでなく、初回手術においても同様です。組織への侵襲を最小限に抑え、血流を温存し、不必要な剥離や過度な緊張を避けることが、結果として1年後、さらには1年半後の鼻の柔らかさや自然な仕上がりにつながると考えています。


最後に

瘢痕のピークを下げる工夫は術後ケアだけではありません。

  • 組織への侵襲を最小限にする
  • 血流を温存する
  • 不必要な剥離や過度な緊張を避ける
  • 医師の指示のもと、テープ固定や圧迫固定を行う。服薬。

手術を丁寧に行うことは当然ですが、術後アフターケアをしっかりと行ってはじめて、鼻の手術は完結します。

ケナコルト注射についてQ&A

瘢痕が強い時期に不安でケナコルト注射を希望される方や、他院手術後の瘢痕増殖に対するケナコルト注射を希望される方がよくいらっしゃいます。よくあるご質問に対する回答です。*当院はケナコルトの代わりにリンデロン懸濁液を使用していますがケナコルトに関するご相談が多いため、Q&Aを作成しました。

他院で術後にケナコルト注射を瘢痕に打ってもらったら凸凹になりました。修正手術は可能ですか

これは多いご相談です。ケナコルト注射は適切に実施しないと凸凹になります。安易に医師に依頼することも、医師が安易に使うことも、好ましくないです。修正の可否については診察が必要ですのでお越しください。

ケナコルト注射を打てば誰でも瘢痕がなくなりますか

ケナコルトの効果には個人差があります。安心のために打つ注射ではありません。打ち方によっては凸凹ができ取り返しがつきません。慎重にご検討ください。

真皮脂肪移植を受けましたが、ケナコルト注射を打ってもらえますか

投薬濃度、量によっては、注射した部位から近いところの真皮脂肪が吸収されます。真皮脂肪は次第に落ち着いてきますので焦らないようご注意ください。

他院で手術を受け2年が経過しました。ケナコルト注射を打って細くできますか

術後2年も経過していると、ケナコルト注射は効果がないどころか凹みます

これから修正手術を受けますが、鼻の瘢痕がすごいので修正前にケナコルト注射を打っておいた方がよいですか

修正手術の前にケナコルト注射で一時的にコントロールするということは通常行いません。

他院で手術を受けたところ鼻尖に腫れや瘢痕が残りました。横山先生にケナコルト注射を打ってもらうことはできますか

ケナコルト注射は、凹み、皮膚が薄くなる、稀に局所感染が起こるリスクがあります。手術結果の責任の所在が曖昧になるため、当院では対応していません。執刀医の先生にご相談ください

他院でケナコルト注射を打ったところ皮膚が陥没してしまいました。修正する方法はありますか

陥没の状況にもよりますので、一度診察で拝見させてください。

ケナコルト注射には、皮膚が薄くなる、凸凹になる以外のリスク、合併症がありますか

軟骨が軟化するとも言われています

他院でケナコルト注射を5回以上打ちましたが変わりません

ケナコルト注射はそう何度も打つものではありません。リスクを考えたら5回以上打つということはありませんし、5回以上打って合併症も出ず何も変わらないというのも考えられません。5回、10回打つというのはありえません。それはもはや気休めです。当院ではリンデロンは3回までです。

他院で何年もずっとケナコルト注射を打ってもらっています。このような治療を今後も執刀医にお願いしても大丈夫なのでしょうか

ケナコルト注射が有効なのは瘢痕が増減をする時期だけです。落ち着いた後にいくら打っても意味がありません。合併症が出るだけです。

ケナコルト注射を打ったところが陥没してしまったので、コンデンスリッチ脂肪を凹みに入れる提案をされました。入れてもよいのでしょうか。

ダメです

誰でもケナコルトを打てば瘢痕が減るというものではないのでしょうか

断った方が良い方もいます。見極めが大切です

私が手術を受けるクリニックは、鼻の手術のあとにケナコルト注射をするのがセットになっています。このような手術を受けても良いのでしょうか

そういうところはダメです

複数回ケナコルトを注射した部位がありますが修正手術はしてもらえますか

ケナコルトを何度も注射したところは皮下組織が薄くなっています。術後に血行障害を発症し数日間は暗紫色になる可能性がありますが、手術はできます

医療法人社団S&T医会 

銀座すみれの花クリニック

院長 横山才也

形成外科認定専門医

日本美容外科学会専門医(JSAPS)

【専門医解説】テンションノーズとは?

穏やかな微笑みを浮かべる女性が顔に手を当てている写真

テンションノーズ(Tension Nose)とは、直訳すると「緊張が生じている鼻」になります。鷲鼻で鼻先が垂れ下がっている状態、を意味します。

「鼻中隔軟骨(鼻の土台となる中央の軟骨)が過剰に発達した状態」を指す解剖学的特徴の名称で、鼻骨を含めた鼻中隔軟骨の成長様式が関与する先天的な鼻の形態であり、家族内で似た鼻の形が見られることも少なくありません。

どのような状態が生じるのか?

鼻中隔軟骨が大きく発達した場合、以下のような一連の「緊張(テンション)」が鼻全体に生じます。


 鼻背(ハンプ):鼻中隔軟骨が中央で押し出されるため、ハンプ(鷲鼻の段差)が出現します。


 鼻尖:鼻中隔軟骨が前に大きく張り出すため、鼻尖の皮膚や軟骨が引っ張られ、結果
として下向き(下垂)にツンと尖る、あるいは垂れ下がった状態になります。


 上唇: 鼻の下(鼻柱基部)が前に引っ張られるため、上唇が引っ張られて短く見えた
り、笑ったときに歯茎が見えやすくなったり(ガミースマイル気味に)します。

解剖学的な状態とその表現


テンションノーズは「ハンプ」と「鼻尖の下垂(垂れ鼻)」がセットで引き起こされている解剖学的な状態そのものを指します。

臨床的にも「テンションノーズ」という言葉自体が「ハンプ+鼻尖の下垂+組織の突っ張り」という一連の状態を指すことがあり、「テンションノーズ=垂れ下がった鷲鼻の状態」と表現することはあります。

患者様には、単に骨や軟骨が盛り上がっているだけの一般的な鷲鼻(ハンプ)と区別して、「鼻中隔軟骨の過発育による突っ張りが原因で鼻先が垂れ下がっているタイプ[=テンションノーズを伴う鷲鼻]」だと説明することが多いです。

鼻の種類について、ハンプとテンションノーズの2つのタイプを比較したイラスト。左側にはハンプの特徴が説明され、右側にはテンションノーズの特徴が示されています。

治療における注意点について


一般的に、広義には鷲鼻は鼻中隔軟骨の過発達を指しますが、分類は重要です。なぜなら手術のアプローチが全く異なるからです。


 鼻背が出っ張っているだけのハンプは、骨と軟骨を削るだけですっきりした鼻になります。


 一方テンションノーズを伴う鷲鼻は、 ハンプを削るだけでなく、テンションがかかった鼻尖の下垂を取り除く必要があります。ケースによっては突っ張りの根本原因である「大きすぎる鼻中隔軟骨」を適切にデプロジェクション(減量)することも検討します。

【重要】ハンプやテンションノーズの方がもし美容外科医に「あなたの鼻は土台が弱い」と言われたら、それは高い手術を売るためのセールストークです。騙されないでください。

美容外科手術アドバイス

ハンプのない方が、自然さを求めてハンプを作る手術を希望されることがあります。ハンプが美しいと考える方も世の中には大勢いますので、ハンプを削ったり無くしたりすることが全てだと考えないでください。

ただし、どうしても削りたい、すっきりしたデザインにしたい、という場合は、当院でも手術が可能です。

軽微なハンプからテンションノーズまでグラデーションがあります。一般的に鷲鼻と呼ばれるものは漠然としたイメージで明確な形態を指しているわけではありませんが、大まかに分類すると以下のような図となります。

ハンプとテンションノーズの関係を示す図。左にハンプのグループ、右にテンションノーズのグループがあり、それぞれの特徴を説明。

修正手術について

当院でははじめての手術だけでなく、他院手術で以下のような結果になった方の修正手術を多数手がけています。お気軽にご相談ください。

  • ハンプを削ってもらったはずなのにハンプが残っている
  • 希望したデザインにならなかった
  • ハンプ減量術と同時に鼻中隔延長を受けたが高くなりすぎた

様々な症例

もともとしっかりとした高さのある鼻のため、鼻中隔延長で延長させることよりも減量を目指すことが大切です。鼻中隔延長を受けて修正になる方は多いです。テンションノーズだけでなく、ハンプが気になる程度の症例も含めてご紹介します。

初回手術*すっきりとしたデザインに

左側は手術前の女性の横顔、右側は手術後9か月の横顔

・鼻骨々切り幅寄せ術

・鼻根部細片耳珠軟骨移植術

・上外側鼻軟骨・左側部分減量

・上外側鼻軟骨上・細片耳珠軟骨移植術

・鼻尖縮小術

・鼻尖部耳珠軟骨移植術

・梨状口縁部シリコンプロテーゼ挿入術

 (鼻翼基部プロテーゼ チタンスクリュー固定)

修正手術*すっきりとしたデザインに

左は手術前の女性の横顔、右は手術後7ヶ月の横顔

・ハンプ減量術
・鼻尖・鼻柱部移植耳軟骨摘出術
・左右下外側鼻軟骨形成術(ストラット法)

他院修正*鼻中隔延長を受け過度な高さになった鼻の修正

術前と術後6ヶ月の顔の側面を比較した画像

・ハンプ修正術(不整であり、平坦化)

・鼻尖・鼻背部移植耳軟骨摘出術

・延長移植軟骨全摘術

・鼻尖中間脚陥凹部耳軟骨移植術

・左右下外側鼻軟骨修正術

・左右鼻骨陥凹部細片耳軟骨移植術

・右上外側鼻軟骨陥凹変形部細片耳軟骨移植術

他院修正*ハンプ減量が不十分だった鼻の修正

術前の横顔と術後6ヶ月の横顔の比較画像

・再鼻骨々切り幅寄せ・ハンプ減量術(わし鼻再形成術)

・鼻中隔部IHCC全摘術

・再鼻中隔延長術(肋軟骨)

・鼻尖・鼻柱部細片耳珠軟骨移植術

初回手術*減量して整える

左:手術前の女性の横顔、右:手術後6ヶ月の女性の横顔

・ハンプ減量術(鼻骨~上外側鼻軟骨減量)
・耳甲介軟骨によるストラット法

初回手術*テンションノーズの減量と鼻尖形成

左:手術前、右:手術後7ヶ月の女性の横顔写真

・ハンプ部減量術(鼻骨・上外側鼻軟骨減量)
・カルメラストラット法による鼻尖形成術
  (片側耳甲介軟骨採取 同時に鼻尖偏位修正)

日本や韓国の美容外科では、鷲鼻の土台の高さを生かし、鼻背をそらせ鼻先をツンとさせるので迫力のある鼻になりがちです。一方で、欧米では鼻根を大胆に低くして鼻背をそらせ鼻先をツンとさせる傾向があります。これはSNS映えし一見美しい変化なのですが、上外側鼻軟骨が内側へ落ち込む、吸気時の鼻翼陥没といった大きなリスクがあります。美容外科手術は、「ほどほどが極み」です。やりすぎず、足りなくもない、そこを目指すことで健康と美しさの両方が手に入ります。

ご予約

初めての手術から修正手術までお気軽にお申し込みください。

医療法人社団S&T医会 

銀座すみれの花クリニック

院長 横山才也

日本形成外科学会認定専門医

日本美容外科学会専門医(JSAPS)

【専門医解説】注意喚起:鼻プロテーゼの上にはヒアルロン酸を注入できません 感染の可能性 鼻の変形とアップノーズ

鼻のプロテーゼ上には

ヒアルロン酸を注入すべきではありません。

プロテーゼが入っているのに

もう少し高くしたいからと言って、

ヒアルロン酸を注入すると

プロテーゼが感染してしまうことがあります。

ヒアルロン酸注入前の

不十分な皮膚消毒では、

感染することがあり、

この場合

注入から1~5日程度で

鼻部が発赤し、腫れます。

プロテーゼが感染したときは

抗生物質の内服や点滴で

様子をみるべきではなく、

プロテーゼ摘出が第一選択となります。

鼻孔縁を切開し、

ドレナージチューブを挿入し、

毎日洗浄といった方法もありますが、

改善に時間がかかり、

鼻翼軟骨が健康なかたちのままで

治療しないケースもあります。

特にプロテーゼが感染したにもかかわらず

内服薬や点滴だけで様子をみると

炎症が拡がり、

鼻の皮膚が拘縮し、

鼻翼軟骨が収縮することで

鼻尖の変形、アップノーズを発症します。

また感染の増悪で

皮膚に穴が開き、排膿することによって

その傷あとが残ることもあります。

鼻プロテーゼ上や近傍に

ヒアルロン酸を注入することは

感染するリスクがあり、

控えなければいけません。

以前鼻プロテーゼが入っている患者様で

他院で眉間にボトックスを注入し、

プロテーゼが感染した方が

当院にお越しになったことがありました。

鼻プロテーゼが入っている場合、

鼻へのヒアルロン酸注入は控えるほうが良く、

眉間や鼻根周囲へのボトックス注射は

慎重な検討が必要かと思います。

以下の画像は

鼻根に数回ヒアルロン酸を注入したところ

横に拡がってしまった患者様です。

↓初診時

 鼻根を高くし、すっきりさせようと

 何度も注入しているうちに

 太い鼻根になってしまいました。

顔の中央部分、鼻と皮膚の質感がクローズアップされた画像

↓ヒアルロン酸を溶解し、

 鼻根から鼻背にI型シリコンプロテーゼを

 入れることになりました。

 溶解すると鼻根から鼻背は平坦になりました、

顔の中心の部分を示す画像。鼻と周囲の肌のテクスチャーが見える。

↓プロテーゼ挿入から2ヵ月です。

 希望通りの細めの鼻根になりました。

 この患者様は同時に鼻尖形成も行いました。

顔の近接画像、鼻と口元が中心に写っている。

この患者様は

術後の結果に満足されていましたが、

プロテーゼを挿入した患者様の中には、

数か月経つと

鼻の高さやかたちに慣れてしまい、

物足りなさを感じる方もいらっしゃいます。

高いプロテーゼを入れると

抜きたくなり、

控えめなものを入れると

もっと高くすべきだったと考えがちで、

現状を受け入れる努力も必要です。

慣れに負けて、

ヒアルロン酸を注入するといったリスクを

安易に選択しないようお気をつけください。

医療法人社団S&T医会 

銀座すみれの花クリニック
医学博士 院長 横山才也

日本美容外科学会(JSAPS)専門医
日本形成外科学会専門医

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http://ginza-sumirenohana.com/