形成外科専門医の横山才也です。最近美容外科でも使用されるようになった人工真皮について解説いたします。こちらの記事は美容外科の関係者や患者様向けの記事となっています。
<目次>
人工真皮とは
人工真皮とは、若い牛の真皮や豚の腱を処理して作られたコラーゲン層です。基本的には熱傷や外傷で皮膚と真皮を失った方に使用します。2週間程度貼付したまま待つと、コラーゲン層の中に血管が侵入して、肉芽組織に変わります。その組織は赤く、血管が豊富な組織で、その上に自分の皮膚を移植すると生着が良く、直接皮膚を移植するよりもしなやかさがあると言われています。
使用の適応は、指を含む手、顔面、関節部の皮膚欠損です。1990年代に狂牛病が社会問題となり、牛由来の人工真皮の使用は一時休止となりましたが、牛の選別や処理の方法によって、安全性に問題がないことが確認され、牛由来の人工真皮は臨床で使われるようになりました。それ以降日本では、患者様に使用する場合は、人工真皮を使うこと、動物由来のものであることを術前に了承を得ることが必要となりました。
適用は、皮膚欠損層とされています。特に表皮だけではなく、真皮も欠損した状態に対しての使用とされています。一方、コラーゲン層の上には、厚さ0.2mmのシリコーン膜が貼られており、コラーゲンが乾燥しないように作られています。コラーゲン層に漿液が溜まったり、血液が溜まると、コラーゲンの中に血管が入らないため、シリコーン膜に小さな穴が開いたものもあります。人工真皮は周囲に血液が溜まると、血管侵入と肉芽組織の形成を阻害するので、医師は定期的に人工真皮を観察する必要があります。2週間程度経ったら、コラーゲン層に血管が侵入して赤くなります。そうすると、皮膚移植を行うことが可能と判断します。顕微鏡的にはコラーゲンには血管が侵入し、コラーゲンはできるものの繊維組織も含まれており、学術的にはこれを真皮とは言わず、真皮様組織と呼びます。2018年に人工真皮にFGF(線維芽細胞増殖因子・フィブラストスプレー)を混入させ、よりしっかりとしたコラーゲン組織を作ることができるようになりました。
症例
私が皮膚の欠損を人工真皮で治療した症例を2例紹介します。画像は一般の方に見ていただくことを想定して画像カットと、治療中の画像は一部白黒に加工しています。
<症例1>

<症例2>
左は欠損した指に人工真皮を貼付した画像です。右は受傷後1年の結果です。

参考
より詳しい情報は以下のサイトへ
アルケア株式会社
https://www.alcare.co.jp/medical/product/docs/436_terudermisartificialdermis_1902.pdf
京都大学医学部附属病院形成外科サイト
鼻の美容手術における人工真皮の使用について
人工真皮の有用性については、鼻の美容手術にはまだしっかりとしたエビデンスはありません。
鼻尖・鼻背など皮膚の薄くなったところに使用することは可能かもしれませんが、鼻を高くする目的には使用できません。
美容手術における皮下においては、人工真皮の経過を医師が定期的に観察することができない上、術直後に血液が混入してしまうとコラーゲンに置換できるか、不明な点もあります。また厚い人工真皮を使った場合、中央のコラーゲン層に血管侵入が可能かも判定できず、肉芽組織に置換されなかった動物由来のコラーゲンが異物反応で瘢痕が増殖する可能性を否定できません。
このような動物由来の医療材料を使用することについては、患者へのインフォームドコンセントは必須であり、曖昧な説明で医師が使用することは好ましくありません。
またFGFについては線維芽細胞の増殖によるしこりが問題となっており、FGFを含む人工真皮を安易に美容手術に使用するには、医師と患者双方の人工真皮への理解と患者の了承なくしては術後トラブルの原因となります。
海外の人工真皮を入れる際は、その安全性やFGFの混入等がないかを確認する必要があり、説明なく無断で使用されるケースが頻発しているので注意が必要です。使用する人工真皮の品質についても国によって基準が変わります。使用することを勧められたら、パッケージを見せてもらい、何由来の商品か、FGFが入っていないか、その国の安全基準を満たしているかを確認することが重要です。
韓国で使われる「寄贈真皮」は他人の真皮を処理したものであり、人工真皮とは異なります。通訳から説明を受ける際は注意してください。
日本で認可されている人工真皮は、以下の通りです。
ペルナック®️ 豚の腱が由来の人工真皮
テルダーミス®️ 牛の真皮由来(狂牛病による安全性は混入防止を行なっていると言われています)
人工真皮は真皮脂肪の代替にはなりません。真皮脂肪は真皮を介して脂肪が生存でき、柔らかい皮膚が実現できます。一方、人工真皮はコラーゲン層に血管が入り肉芽組織をつくり、そこに繊維が侵入します。人工真皮が仮に鼻根鼻背に入れられた場合は、2週間以内が摘出可能な目安で、それ以降、肉芽への置換、また繊維に置き換わっている場合は掻爬になりますが、時間が経てば経つほど掻爬は難しくなります。
人工真皮を入れて閉鎖したままにすると、良好な血管侵入による肉芽形成が行われず、不良肉芽*になった場合は、感染の可能性もあります。人工真皮を使用すると言われた場合は、しっかりと説明を聞くようにしてください。
* 不良肉芽:血管侵入がない、肉芽にならなかったもの 脆弱な組織
また、人工真皮を鼻翼基部、鼻背、鼻尖に入れたが大丈夫か、というご質問をよくいただきます。
人工真皮は自分の組織ではありませんので感染する可能性はあります。人工真皮内に血管が侵入し新生血管ができなかった場合は、線維組織に置き換わりません。この場合は、異物として残り、場合によっては取り出さなければならない状態、残しておくべきではない状態になっていることがあります。日本国内ではほとんどの場合、人工真皮は表に出ていて皮膚欠損部に使いますので観察できますが、海外の手術で完全に皮膚の中に入れられてしまった場合は経過が分かりませんので、手術を提案された場合は十分な注意が必要です。
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